Bait Assalam

パレスチナ、中東、世界・・・不可思議な世界の絵解きをご一緒に
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アラブの兄ちゃん
前回、BBCのスキャンダル事件を書いたが、最悪の結果になってしまった。ドクター・ケリーの「自殺」事件は、今なお捜査が続いている。事件の解明が進まなくては何もいえないが、彼と、彼のご遺族の魂の安らぎをお祈りいたします。


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「アラブの兄ちゃん」と聞いて、日本の人はどういう人たちを想像するのだろうか。

アラブのズルズルの民族衣装を身につけた人たちが町中歩いているとか。
デモの映像でよく見られるような、ヒゲだらけでちょっとギラギラした感じとか。

いいえ、違います。
アラブの兄ちゃんを一言で言えば、シャイなくせにキザな伊達オトコです。

かれらは、とにかく小さいころから女性を大切にして、喜ばせることを心がけているので、歯の浮くようなロマンチックなことをしたがる。ただ道を聞いただけなのに、連れて行ってくれて、それはいいのだが、公園のバラを勝手に切って捧げていただいた事があった(悩)。

まあ、外国人旅行者はかれらにとって数少ないアバンチュールの対象だし(既婚者でこういうアホはほとんどいません。大抵は婚約者のいない若いの)、頭の中にはいろんな妄想が渦巻いていたのかもしれないが、やっぱり元はロマンチストで、そういうカッコイイことをしたいお年頃なのだろう。実際は、イタリア男なんかに比べるとずっとシャイで、大したことはできないのだが。

しかし、シャイなくせに服装はハデである。というか、はっきり言ってチンピラにしか見えない。正直言ってなんかカン違いしているのではなかろうか、と思うような服を着ている。冬はみんな皮ジャンを着たがるし、夏は夏でえらくハデな模様のシャツを着ている。「シック」というのにはほど遠い服装センスである。

がっちりしているから、背広を着るとかなり映えるのだが、なぜかマフィアにしか見えない人もいる。地中海人種でイタリア人に似てるせいかもしれないが、なんかカタギに見えない。あの着こなしの不思議はなんなのだろう(中身はいたってまじめ、まじめすぎるのだが)。

この、浪漫ちっく好みで、ハデ好きで、というアラブ人かたぎは、写真にも現れている。アラブ人だけでなくて中東人はほとんどがそうなのだが、写真が大好き。記念写真なんかは、もう目一杯演出する。兄ちゃん連はイスに片足をかけてアゴとほおに手を当てて(これがはやりのスタイルらしい)、ニカッと笑ってこちらに流し目をくれていたりする。そして、持っている人は、しっかり皮ジャン。もう、気分は、映画スターなのだ(実際、ブロマイドを意識している)。

写真屋に行けば好みの背景をつけてくれたりする。人気の背景はエルサレムのあの金ぴかのアル・アクサ・モスク。しかし、実に遠近法を無視したような作りで、兄ちゃんがまるでウルトラマンのごとく巨大になっていて、それでもうれしいらしく、非常に誇らしげに写っている。

結婚記念の写真もこのパターンで、映画のワンシーンを意識したようなものが多い。愛し合う2人がひしっと抱き合った写真とか(ほんとうに、ひしっ、としか言えないポーズである)、希望の未来を二人でうっとりと見つめる写真とか。日本で、高校生くらいの男の子がお父ん、お母んのこんな写真をアルバムで見つけたら、ちょっと暴れたくなるのではなかろうか、という写真だ。

日本では、ハワイあたりの海岸を礼服を着た花婿がドレス姿の花嫁をお姫様抱っこして50mほどダッシュするという、演出たっぷり、しかし男性には苦行そのものであるようなブライダルビデオを撮る会社があるそうだが、アラブ人なら、そんな苦行は全く問題ではない、ぜひぜひ撮ってくれ、と目を輝かせていう人が続出するのではなかろうか。




先日、そのアラブ人の写真がたくさん載った本を買ってきた。


金ぴかのアル・アクサ・モスクをバックにこちらに流し目をくれている兄ちゃんの左手は動かない。15歳の時に撃たれて一生治らない障害を負った。24歳で射殺された。

新妻とひしっと抱き合っている兄ちゃんは、11歳のころに撃たれた。3回逮捕された。一回は「協力者」に病院に連れていかれ、軍に引きわたされそうになったが、友だちに救われて脱出した。男の子と女の子、子供を二人持つことが夢だった。デモで受けた傷が元で友だちが死んだあと、妻にも言わずに黙ってその葬式に出かけ、死んだ。結婚式の2日後だった。

国旗を肩にかけたホテルマンの卵は衝突の負傷者のニュースを聞いてすぐに着替え、献血をしに病院に駆けつけた。献血のあと、病院の外で撃たれた。

ボディビルとカンフーで鍛えた胸板をぐっと突き出してふんぞり返っている兄ちゃんは、傷ついた人を救おうと暴動の中に突っ込んでいった。撃たれる前に警官に頼んだ。「撃たないでくれ!この人をよそに移すまで待ってくれ!」。怪我人を運び終わったとたん、頭を至近距離で撃たれた。そのときのイスラエルの警官の言葉は、書きたくない。

コーランのテープを大事にしていた内気そうな18歳の兄ちゃんは3人の兄弟がいた。みな、紛争で撃たれ、一人は重篤な障害を負っていた。自動車事故のニュースを聞いて、友だちと一緒に怪我人を助けに行こうとした。現場でイスラエル兵の無差別射撃にあって頭を撃たれ、病院3つを転々とし、2日後に亡くなった。パレスチナ治安維持長官ムハンマド・ダハランの甥だった。




本の名前は「100 Shaheed――100 Lives」。

2000年10月に始まったパレスチナのアル・アクサ・インティファーダで犠牲になった最初の100人の写真と遺品を集めた本である。

篠山紀信が死の直前に撮ったジョン・レノンの最後の写真は、真正面から撮った、演出も何もない、だからなおさら「死」を予感させるようなものだった。

写真の中には、いかにもID写真です、といった、何の演出もされてない、笑顔もない写真も多い。だから、「遺影」を連想させて「死」は違和感がない。「死」は、それが必然であったかのように時の中に記される。

でも、その中の、演出たっぷりの、キザなポーズで笑っている兄ちゃんたちの写真は、「死」の臭いがしない。明日また公園のバラを勝手に切って観光客の女の子に捧げそうな顔をしている。正当に流れるはずだった彼らの時間は、気まずそうに宙をさまよっている。そしてそれが、彼らの死の理由をどこにも見つけられないという事実を示している。

戦争の犠牲者の写真は、まるでそれが予定調和であったかのように「死」を語ったものが多い。

この、パレスチナの兄ちゃんたちの写真は、彼らのために用意された時間があったことを示している。彼らのために準備された、膨大な未来時間が。100人分の未来時間。



壁の前の、若い父と子。父は両手をあげたが、その手を撃たれた。息子は叫んだ。「お父さん、僕を守って!」。父は息子を庇ったが、二人とも撃たれ、息子は死んだ。父の体からは8発もの銃弾が出てきた。その一部始終を映した映像は、世界を駆け巡った。

キブツ(イスラエルの集団農場)で催されたイスラエルとパレスチナの和解のための集会に出た若者は、そのニュース映像を見てデモに行った。そこでパレスチナを侮辱され、抗議しようとして撃たれた。森の写真をバックに、頭にサングラスをあげて腰に両手を当て、さりげなくかっこつけた写真が残っている。


シャロンが神殿の丘を無理無理に訪問して、パレスチナを挑発しなければ。


答えを探す。答えは、どこにもない。彼らの死の、明確な解は。





彼らの写真と遺品は、この夏日本中を回る。

お葬式の形見分けのような、ひっそりとした展示会。日本だけでなく、世界中で、隠れ家のように催される。

パレスチナではボクシングとカンフー、テコンドーが流行だったらしい。サッカーも大好き。グローブや道着、サッカーボールの遺品もある。紛争や拘留で小学校さえ出られなかった彼らの、ささやかな夢。

展示会の名前は、『シャヒード、100の命−パレスチナで生きて死ぬこと』。
http://www.shaheed.jp/



シャヒードとは、神の道に沿って生き、そのために死んだ人たちをさす言葉である。



『絶望してはいけない。神はその扉を閉ざしてはいない』。

(ムハンマド・タマム。建設労働者。トゥルカレムのデモで死亡。享年19歳)






彼らの失われた未来時間に。夢に。その悲しみに。







「100 Shaheed――100 Lives」は英−アラ対訳版(1000円)。
日英対訳版『シャヒード――100の命』(2000円)もアマゾンで注文できるそうです。現在増刷中。

詳細はこちらで。
「シャヒード、100の命−パレスチナで生きて死ぬこと」展
http://www.shaheed.jp/



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シャヒード、100の命―パレスチナで生きて死ぬこと
シャヒード、100の命―パレスチナで生きて死ぬこと (JUGEMレビュー »)
アーディラ ラーイディ Adila La¨idi Isabel de la Cruz 岡 真理 中野 真紀子 岸田 直子 イザベル・デ・ラ クルーズ

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